「なんか、こういう景色見てると、世界の終わりってこんなんなんかなって思う」(p.134)
わたしは、長いあいだ片思いを続けていた相手に突然好きだと言われたみたいな、今までの人生でそんなことは一度もなかったけれど、きっとこれがそんな気持ちなんだと思った。(p.165)
「後で書きます」と書いたはいいものの、これがなかなかどうして、この小説を読んでいる最中に感じていたことや、読み終わった後に感じたことを言葉にすると云うのが、想像以上に難しくて、何をどう書いたらいいものかと、正直とても困っています。これはもう本当に、実際に読んでもらわなければどうにも伝えようがない、と云う想いと、自分が感じたこと、感じていたことを巧く纏めることが出来ない、と云う困惑が両方交じっていて、我が胸中は実に厄介なことになっておる訳ですなぁ、これが。一週間前、島本理生の『リトル・バイ・リトル』について書いた時にも触れたんですが、僕は「読んでいる最中の快さ」と云うのを非常に重要視していて、ただそれはストーリーや登場人物や舞台設定やトリックなどと云ったような形で、判り易く説明したり良さを伝えたりするのがとても困難なので、「何かよく判んないけど、あいつっていい奴だよね」と誰かにそっと告げるみたいに、「何かよく判んないけど、これっていい小説だよね」と書くのが、今の僕には精一杯のような気がします。空気の美味しさは、実際にその場所へ行って吸ってみないと判らない、みたいな。まぁ、全体的に煙に巻いている感じがするかも知れませんが、「旅館 ひうら」には行ってみたいなぁ。温泉じゃなくていいから。
それにしても最近、本に関する文章が特にスランプだなぁ。どう書いても(自分が実際に読んで感じたことに対して)的外れのような気がしてしまって、確定的な言葉が出てこない。僕の中で、色んな読みや解釈が鬩ぎ合っているせいかも知れない。「十人いれば十通りの読み方がある」とか云うけれど、それじゃあ一人で幾つも読み方を提示出来ないから、何だか変な感じですよね。ある一つの作品を読むことによって、全然関係なかったり、矛盾したりすることを感じたりもするじゃないですか、普通。普通、ですよね……?
- 作者: 柴崎友香
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/11/01
- メディア: 文庫
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