chronic life

地下室の屋根裏部屋で

熱帯/佐藤哲也/文藝春秋

「ありました。各自の判断で最善を尽くせ、と書いてあります」(p.213)

どこまでが本気で、どこからが冗談なのか。いや、世は凡て冗談なり、と云うことなのかも知れない。或いは、もっと深遠な神々の父なる神の大いなるご意思が隠されているのではあるまいか――。などと、そんなことは勿論どうでもよく、読んでいる最中こんなに笑えたんだから、もうとにかくそれで充分じゃないか、と云うのが今の率直な気持ちだったりします。とても面白かったです。以下、特に深い意味もなく隠します。一応、未読の方はご注意を。
読み始めて、p.11の冷やし中華の件で「面白い!」と想い、p.44から延々と続く会社の説明に差し掛かって「これは傑作だ!」と確信した。それからはずっと、作者の掌の上で面白いように踊らされていたのだけれど、p.261に至って、僕は想わず大声を上げずにはいられなかった。「うっそ〜!」と。これまでもバカバカしい描写や記述は山のようにあったけれど、ここはちょっとレベルが違っていた。だって、だってそんな……バカな。その時、僕は漸く気付いた。「事象の地平の彼方」に、何かまともなものを期待していた僕の方が、よっぽどバカだったんだ、と。つまり僕は、『熱帯』に完敗したと云うことである。ブラボー!
それにしても、装幀が内容に全然合っていないと想うのは、僕の気のせいだろうか? まぁ、この装幀が丁度いい、と云う気がしないでもないが。あ、この裏表紙の三匹が水棲人か! 今気付いた。

熱帯

熱帯