chronic life

I can (not) have relations.

角田光代『薄闇シルエット』角川書店

アルバイトのきんちゃんは、人は発展も後退もない、金太郎飴的状況に耐えられないようにできている、と言っていたが、私は金太郎飴的状況をこそ求めているのかもしれなかった。(p.156-157)

私たちはいつだってひとりずつで参加しなくてはいけないのだ、人生というものに。(p.206)

角田光代の小説は、鏡のようなものだと想った。読んでいる人間の本音や、心の奥に隠していた感情をつぶさに映し出してしまう、恐ろしくも素晴らしい小説であるとも。僕が読んだタイミングのせいもあるのかも知れないけれど、こんなに自らの内面を抉られるような作品だとは、正直想っていなかった。読んでいる最中、何度薄ら寒い恐怖のようなものを感じたことだろうか。しかし、このラストで良かった。決して、ハッピーエンドとは云い切れないかも知れないが、このラストで僕は少しだけ救われたような気がした。それぞれを別個の短篇としてみると、「ウェディングケーキ」が一番のお気に入りだ。結婚式のスピーチでちょっと滅茶苦茶なことをやってしまうと云うのは、ある意味僕の一つの夢でもある。そして今正に、最初の結婚ブームの波が押し寄せているように感じた。いや、まだ判んないけど。

薄闇シルエット

薄闇シルエット