chronic life

地下室の屋根裏部屋で

アムニジアスコープ/スティーヴ・エリクソン/集英社

「映画の、どういうこと書くの?」
「好きかどうかを書くんだ」

ある作家の愛と記憶を巡る小説――なんて、一文で纏められたらどんなに楽なことか。とてもそんな一言では云い尽くせない何かが、この小説からは溢れています。『黒い時計の旅』にもかなりの衝撃を受けたんですが、単純な好みと云うか、どっちが面白かったかと問われたら、多分僕はこっちだと想います。もうね、エリクソン面白過ぎ!
好きなシーン*1も沢山あるんですが、特に『白いささやき』の撮影の件……と云うか、ジャスパー絡みのところは大体好きですね。けど、一番心を揺さ振られたのは、220頁を過ぎた辺りの「私」と父との関係や夢の話からの流れで、ここは何かもう、グラグラ来た。震度7。それ以外にも、作家としての葛藤と云うか思考みたいなものが流れ出したようなところは全部いいですね。後、読んでいて時々埴谷雄高っぽいかも、と想うところも少しありました。いや、もう何云っても無駄な感じもしますけど。とにかく、最高に面白かったです。素晴らしい小説でした。
それにしても、ジャスパーとは何ともはや……。

アムニジアスコープ

アムニジアスコープ

*1:シーンと云う言葉は適切ではないかも知れないけれど