読了。あまり評判が宜しくないようだったので、若干恐る恐る手に取った、現時点での小川勝己最新作。久し振りに発表された長篇でもある。で、どうだったかと云うと、僕は普通に面白かったです。「これが小川勝己の最高傑作だー！」とか叫ぶほどのアレではないですが、僕が求めている水準は充分にクリアしていたと想います。小川さんに関しては、結構ハードル高いつもりなんで、普通に云えば「かなり面白かった」です。
主人公は作家だし、どうも色々と小川さんの趣味が反映されているような部分が見受けられて、珍しく私小説的雰囲気も漂っていたのですが、そんな邪推も何のその。この、小川勝己の女性に対する愛憎と云うか、深い怨念のようなものは一体どこから湧いてくるのだろうか。そりゃあまぁ、主人公の作家とかも相当ヤバいことに変わりはないんだけど、いやぁもう何かさぁ、絶対恋愛とかしたくなくなるよね。不幸になるだけのような気がしてくるもん（笑）。
で、読んでいる最中、唐突に「これは大人版『セカチュー』なんじゃないだろうか」と云う妄念に取り憑かれてしまって、それが最後まで拭い切れなかった。終盤の痛々しい展開は、正にそう云った部分での現実の厳しさ、と云うか「人間狂ったらここまで来るんだって」と云う、小川勝己の諦観と云うかニヒリズムを感じ取ってしまった。それ故、ある意味で「純愛小説」と云う触れ込みは正しいような気もする。「純愛」なんて、突き詰めたら狂っちゃうだけだ、って云う例。皮肉とも云うが。
- 作者: 小川勝己
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/07/21
- メディア: 単行本
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