chronic life

I can (not) have relations.

浄夜/花村萬月/双葉社

とても面白かったです。大変満足致しました。正に「満ち足りた」と云う表現が的確で、僕が花村萬月の小説に求めているものが、凡て揃っていたと云っても過言ではありません。それを言葉にするならば、エンターテインメントと純文学の境界例、暴力、狂気、孤独、エロス……そして何より、小説を書くと云うことに対する並々ならぬ自意識。他にももっと色々あるような気がしつつも、今パッと想い付いたのはそれくらいなのですが、とにかく全部が詰まっています。寧ろ、溢れちゃってます。もう何と云うか、語り口は非常に軽妙なんだけれど、中身は濃いし重いし正直しんどい。しかし、読み進めるのが楽しくて仕方がないのも揺るぎない事実でして。それに、誰一人としてまともな登場人物が出てきません。ほんのワンシーンしか登場しないような、脇のキャラに至るまで、皆が皆萬月印。まぁ、そこが素晴らしい訳ですが……。
嗚呼、何だか一生懸命この小説の面白さを伝えようとしているのに、返って読者の幅を狭めているような気がするのは僕の杞憂だろうか? そうだ、判り易いキャッチコピーを掲げてみよう。「30代以上のためのファウスト!」ってのはどうだろうか。だって、読んでて本当そんな感じなんだもん。まぁ、何でも『ファウスト』に託けて宣伝*1すればいいってもんでもないでしょうけど。とにかく、僕は最高に面白かったです。もっと多くの人に読まれて然るべき作品だと想いました。多少(かなり?)、あくは強いですが。

浄夜

浄夜

*1:喧伝?