村上さんの語り口のお蔭か、内容自体に非常に興味を惹かれたからなのか、驚くほどに――いや、恐ろしいほどに読み易かったです。こんなに文章がすらすらと脳内に流れ込んできたのは、一体いつ振りか知れません。村上さんの小説以外の本を読んだのはこれが初めてだったのですが、こんなに読み易いなら幾らでも読めると想いました。しかし、これは多分、普通のエッセイなどではなくて、「小説案内」だったからこそ、これほど滑らかに読めたのだろうとも想う訳で、そういう意味では類書を探すのは結構難しいのかもな、と。
今後、自分がそれぞれの作品に当たる際のメモの意味も込めて、この本の中で取り上げられている小説について記しておきたいと想います。吉行淳之介「水の畔り」、小島信夫「馬」、安岡章太郎「ガラスの靴」、庄野潤三「静物」、丸谷才一「樹影譚」、長谷川四郎「阿久正の話」の六篇。これらの作品そのものとはいかないかも知れませんが、いずれも今後是非読んでみたいと想わせる、魅力的な作家さんばかりでした。それにしても、「小説についての文章」と云うのは、どうしてこんなに僕の心をきつく掴んで放さないのだろうか。もしかしたら、小説そのものよりも強く惹かれているのかも知れない。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: 文庫
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