chronic life

I can (not) have relations.

羊をめぐる冒険(下)/村上春樹/講談社文庫

多分、今読めて良かったんだと想う。もし十年前に読んでいたら、こんなに面白さを感じることは出来なかっただろうから。上巻のラストを読んだ時、「もうここで終わりでいいじゃないか!」と想ったくらい、第六章の終わり方が好きだったのだが、やっぱりちゃんと下巻まであって、下巻まで読んで良かった。しかし、こんなにちゃんと「羊をめぐる冒険」だったとは想ってもみなかった。何だかもっと、象徴的な感じがしていた。それ以外にも、色々と誤った印象と云うか、誤解のようなものがあったのだけれど、読み終わってみれば、一体何をどう誤解していたのか、想い出せもしない。だから書けもしない。
村上春樹は恐ろしい。何が恐ろしいかと云うと、その伝染性である。「春樹チルドレン」なんて呼ばれる人達が沢山生まれるのもよく判る気がする。僕に至っては最早、チルドレンどころの騒ぎではなく、グランドチャイルドの域に達しているかも知れないが。
「僕」の相棒が好きです。運転手も好きです。ホテルの支配人も好きです。でもやっぱり、鼠に一番感情移入してしまいます。彼のことを想うと、僕は言葉を失ってしまう。『1973年のピンボール』を読み終わった時、鼠のその後が一番気になると書いたのだけれど、それはやっぱり本当で、僕にとってこの三部作は、「僕」よりも「鼠をめぐる冒険」だったように想う。次はやはり、『ダンス・ダンス・ダンス』を読むべきなのだろうか。いや、しかし……。

羊をめぐる冒険 (下) (講談社文庫)

羊をめぐる冒険 (下) (講談社文庫)