chronic life

地下室の屋根裏部屋で

蕭々館日録/久世光彦/中央公論新社

――素晴らしい。
と、本当はこの一言に凡てを凝縮してしまいたかったんですが、生来の多弁癖を抑え切ることが出来ず、こうして無益に書き継いでしまっている次第です。取り敢えず、どれくらい素晴らしかったかと云うと、図書館でハードカバー*1を図書館で借りて読んでいたんですが、読み終わった次の日に、文庫版を即購入してしまうほど面白かったです。文庫版は、各章の扉に岸田劉生作の図版が掲載されていないのが、惜しまれるばかりですが。普通、数式のような形で小説を分解することはあまり望ましい行為ではないのかも知れませんが、読んでいる最中に僕は、これって(『季節の記憶』+『官能小説家』)×久世ドラマ*2÷3*3って感じかなぁと想っていたんですが、文庫版の池内紀氏の解説を読んで、「そっか、これって久世版『吾輩は猫である』じゃん」と云うことに後れ馳せながら気付かされました。確かに、本作の麗子を猫に置き換えれば、まんま『吾輩』なんですよね。『吾輩』って略すと、別の何かが想い浮かんでしまう訳ですが。それにしても、芥川龍之介がモデルとなっている九鬼が本当に格好良くてねぇ。芥川、ちゃんと読もうかなぁ。って云うか、久世さんの小説をもっと読みたいと想いました。嗚呼、今頃になって泣けてきた……。

蕭々館日録

蕭々館日録

どうやら〈八木〉というのは、迷々さんの苗字らしい。あたしとしたことが、知らなかった。――〈ヤギ・メイメイ〉――変な名前だ。(p.252)

*1:通常の四六判より一回り大きいA5サイズ

*2:特に、僕の観た限りでは2005年のお正月に放送された『夏目家の食卓

*3:「÷4」でないところがミソ