chronic life

I can (not) have relations.

その2

夢は未だ、続いていた。僕は東京に引越して最初に住んでいた職場の寮にいて、遠方の友達と電話をしていた。何時ものように、とても他愛ない話ばかりだった。あまりに薄い布団の上に横たわって、ぼんやりと天井を見上げながら、僕は徐々に意識が遠退いていくのを感じた。まるで、夢の中でもう一度眠ってしまうような。
僕は小学校の高学年で、近くの街に初めて一人で映画を観に来ていた。しかし、時間軸は微妙にズレていて、やっているのは『スワロウテイル』だった。これは確か僕が中三の時の映画で、劇中で子供が偽札を作るシーンがどうとかで、R指定を受けて中学生以下は観れないなんてことになっていた。だから、僕はその時映画館でこれを観ることが出来なかった。今なら何とか巧く誤魔化して、潜り込もうとか想うのかも知れないが、その頃の僕にはそんな考えは微塵もなくて、ただ単に観たい映画が自由に観れないという現実を、理不尽で哀しいと想うばかりだった。
大きな大きな、暖かい色の夕陽が眼の前にあった。何時のことだか判らない。未だ見たことのない、初めての風景のような気がした。暫くして、僕は漸く気付いた。僕は、泣いていた。意味はよく判らない。そこで眼が醒めた。そしてやっぱり、こっちでも頬には涙の筋が残っていた。