chronic life

I can (not) have relations.

熊の場所/舞城王太郎/講談社

読了。舞城好きー!とか云っとき乍ら、ハードカヴァーを全然読んでなかった僕の、読み残していた最後のハードカヴァー――となる筈が、何時の間にやら『好き好き大好き超愛してる』は出てるし、↑の奴も出るらしいと云うことで、大変中途半端な意思表明に終わってしまいました。残念。
で、本の中身に移ると、実は正直「この本から舞城読み始めなくて良かったなぁ」と想ってます。若しこの作品から舞城に入っていたら、僕はきっと今程舞城にのめり込まなかったと想うし、若しかしたら他の作品は読まなかったかも知れない。だから、後廻しにしといた俺サンキュー、と。以下、各作品毎の感想。
熊の場所――是が頭だったってのは、上の話にも繋がってて、正直是が一番アレだったなぁ。「アレ」と云うのは察して下さい。何かねぇ、要は冒頭に出て来たお父ちゃんの話の説得力を出す為の話じゃないか、と。面白いか面白くないかで云えば、そりゃあ面白いんだけど、舞城はきっともっと面白い筈だと云う幻想と云うか期待がある訳で、その僕の期待には今一つ応えきれてない気がして、「舞城もっと出来るよ!」とか想ってしまった。後、途中で僕は何故か是には叙述トリックが使ってあるんじゃないかと想って、絶対沢チンは女だとか想ってました。特に、まー君の家に泊まりに行って躰とか触られてる処で、きっとそれは性的接触なのに、沢チンが気付いてない=判ってないだけだと確信していた。いや、全然違うんだけど、何でそんなこと想ったんだろう。不思議だ。
と云う訳で、僕が今迄読んで来た舞城の作品の中では、一番評価低いです。申し訳ない。
バット男――この短篇集の中では是が一番好きかなぁ、何でか知らんけど。主人公の博之が結構好きでね。大賀と梶原両方から相談持ち掛けられた時の対応とか、後半切羽詰ってやって来た時の大賀への対応とか、「あぁーー」って感じ。どんな感じだよ(笑)。後はやっぱ「バット男」ってモチーフが、自分にとって結構身近とか云うか、真に迫る内容だったからかも知れない、うん。人間は、何時誰が殺人者になってもおかしくなように、何時誰がバット男になってもおかしくないんだと想う。ついさっき、バット男を虐げていた筈の誰かが、次の瞬間にはバット男そのものに……なんて、何処の世界でも平気に何時でも起こることだ。
神様は本当に、気紛れで怠け者だと想う、今日この頃。
ピコーン!――多分、日本語で書かれた短篇小説の中で、最も多く「フェラチオ」と云う単語が出てくるでしょう。けど、エロいとかそういうことでもなくて、是はやっぱり愛の物語なんだなぁ。
是は一番ミステリーぽいと云うか、舞城の講談社ノベルスに近い作品。殺人があって見立てがあって、それを暴こうとする人がいる。あ、是云っちゃ駄目か。まぁいいや。僕はね、こういう作品書いてる時の舞城が一番好きなんですよ。だから、こういう作品書いてる時の舞城が一番楽しくやってるんじゃないかって、勝手に夢想してます。そう、唯の僕の妄想。
けど、僕はどっちかと云うとそういう血生臭いことが起きてからよりも、その前の二人の遣り取りとか、智与子の決意とか行動とかを描いている頃の方が好きで、出来ればそのまま綺麗に着地してくれれば、若しかしたらもっと好きになったかも知れない。つまりまぁ、一粒で二度美味しくしようとした感じがあって、元々それは舞城の持ち味の一つなんだけど、是は別にそうしなくてもいいかな、と想った。
いや、しまった。案外長く書いてしまった。短篇集だから、一つずつ仕切り直さなきゃなんないから、仕方ないか。こんだけ色々書いといてなんですが、舞城の出した本の中では、是が一番アレかなぁーと云うのが正直な感想です。それでも充分面白く読んだと云うことは、上の感想の文量を見れば判ると想います。それだけ僕は舞城王太郎と云う作家に大して(ry。