chronic life

I can (not) have relations.

背の眼/道尾秀介/幻冬舎ノベルス

三つ子の魂百までと云うか、田舎――それも山奥の寒村なんかを舞台にした話がとても好きなので、序盤からグッと惹き込まれて、最後まで面白く読むことが出来ました(以前、一度ハードカバー版を読み始めて、直ぐに挫折したことは記憶から抹消しました)*1。確かに、新しい才能の登場を感じさせる快作だと想います。本書において、どうしても触れずにはいられない既存作品からの影響と云う点に関しては、選評で綾辻氏が書かれていた「京極夏彦氏の某人気シリーズ」と云うのは勿論ですが、個人的には寧ろ、横溝的なものを感じました。と云うか、『美濃牛』とか『撓田村事件』とか、そういう感覚に近いですが。まぁ、冒頭の話にも繋がりますが、僕は色んな作品に直ぐ横溝的なものを見出してしまう「横溝知覚過敏」*2なので、あまり当てにはなりませんが。と、ここまで来てこんなことを書くのが野暮なのは百も承知なんですが、「終章」がもうちょっとスマートだったら、もっと褒めてたと想うんですよねぇ。「第八章」のラストが印象的だっただけに、些か惜しい気がしました。とにかく、『向日葵の咲かない夏』と『骸の爪』も楽しみです。

背の眼 (GENTOSHA NOVELS―幻冬舎推理叢書)

背の眼 (GENTOSHA NOVELS―幻冬舎推理叢書)

ところで、読み終わって一つだけ引っ掛かっているんですが、結局歌川の出身地は静岡県の沼津近辺と云うことでいいんでしょうか? 僕はてっきり、秋子の方がそうなのかと想っていたんですが。いや、方言のことを素直に受け取れば、前者でいいんでしょうけど、どうもしっくりこなくて。どこか、読み落としてるのかなぁ。

*1:ハードカバー二段組は苦手です

*2:「知覚過敏」の意味を取り違えているような気もしますが