chronic life

I can (not) have relations.

嫌われ松子の一年/中谷美紀/ぴあ

目の前に起こる全ての事象を受け入れて生きていくしか術がないこと、そして、自分で何かをコントロールしようとすることがいかに傲慢であるかを誰からともなく教えられ、楽な気持ちになった。(p.106)

「夢を叶えるには人生は短すぎる。しかし、夢を諦めるには人生は長すぎる。いいだろう? 27のときに考え付いたんだ」(p.238)

二つ目の引用は、中谷さんの撮影が終了した日に居酒屋で中島哲也監督が云った言葉です。本書は、映画『嫌われ松子の一生』に拘わった期間(主に撮影中)のことについて、同映画の主演を務められた中谷美紀さんが日記形式で記したものであります。以前、エッセイ『ないものねだり』を読んだ時にも感じたんですが、中谷さんは普通に文章が巧いですよね。言葉の選択とか読み易さと云うのも勿論あるんですが、そもそものエピソードの取捨選択が非常に巧みなんだと想います。日記*1と云う性格上、それはとても重要なことで、その点は僕も大変勉強になったと云うか、本書を読んだことによって逆説的に「他人が読んでも面白い日記って、やっぱり難しいよなぁ」と云うことを、改めて痛感した次第でありました。いやはや、全く中谷さんには参りっ放しですよ。よく考えたら、今年の6月に劇場へ映画を観に行って、それからほどなくして原作とオフィシャル・ブックを読んで、更に中谷さんのエッセイやら続篇の小説やらも読んで、その後もう直ぐ最終回の連ドラ版も始まって、映画のDVDも愛蔵版を購入して、そして今回この中谷さんの日記を読んで、僕にとってもここ六箇月くらいはある意味「嫌われ松子の半年」だったのかなぁ、と。

嫌われ松子の一年

嫌われ松子の一年

*1:しかも映画の撮影日記