何度も、何度も再読したくなる小説だと想った。それはきっと、この小説は読む度に気になる、引っ掛かるところが変わるような気がしたからだ。そういう小説が、僕は好きだ。「コーリング」と「残響」と云う二篇が収められていて、保坂作品としては珍しいことに、両方三人称で書かれている。これはとても重要なことのようで、実はそれほど重要でもないような感じでもあるのだが、やっぱり大事な気もしてしまう。結局はよく判らないと云うことなのだが、それは多分、読んでいる最中にそんな第三者的、と云うか批評的なことを考えるような余裕は全然なくて、ただただ登場人物と一緒になって、様々なことを考えたり、想い出したり、想像したりしていたからだと想う。嗚呼、文章が想いっ切り保坂に侵されている。最近は、常日頃からそういう傾向が強いのだが、彼の小説を読み終わった直後は、特にそれがエスカレートしてしまい、殆ど文体模倣に近い域にすら達しているかも知れない。そんな訳で、この小文はここで唐突に幕を閉じる。こんな宣言をする必要も、別にないとは想うのだが。
- 作者: 保坂和志
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2001/11/01
- メディア: 文庫
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