chronic life

I can (not) have relations.

海の仙人/絲山秋子/新潮社

読了。素晴らしい。傑作。滅茶苦茶面白かったです。
先ず最初に、「ファンタジー*1と云う設定が非常に秀逸で、それだけでこの物語の世界観にスッと入り込んでしまった。次に主人公である河野勝男の実に飄々とした、けれど現世と完全に隔絶している訳ではない、「海の仙人」と云うネーミングがピッタリくる人物造形に参り、いつの間にか憧れている。後はもう、出てくる人、出てくる場所、出てくる台詞、全部が心に響いてしまって、もうてんやわんや。
こんな風に書いていますが、物語自体は実に淡々としていて、まるで誰もいない冬の海を穏やかに眺めているように、ゆっくりと時間が過ぎていきます。ラストは、大きな声で「感動した!」と云う感じではないのだけれど、静かで落ち着いた余韻をしっかり残していってくれる。あー、未だに心がフルフル云ってます。これはもう、年間ベストワン級なんじゃないの。絲山さんには、もう頭が上がりません。恐れ入りました。他の作品ももっと読みたいです。

海の仙人

海の仙人

*1:登場人物の名前です