chronic life

I can (not) have relations.

地域限定

山手線で渋谷から池袋に向かっていた途中のこと。新宿で乗り込み僕の向かいに座ったのは、何処からどう見てもペンギンだった。Suicaに描かれている、あのペンギンだ。名前は判らない。そもそも、名前が付いているのかどうかも知らない。しかし、あのペンギンであることは間違いない。何せ、二次元なのだ。
ペンギン自身は何の違和感もなく座席に座っていたし、僕以外の他の乗客達も全く関心を示していないようだった。或いは僕がオカしくなってしまったのかも知れないが、どう見ても眼の前にはあのペンギンが鎮座している。横を向いて、窓の外を窺っているようだった。電車は、高田馬場に到着した。
よく見るとそのペンギン、右手(?)に切符を持っていた。持っていたと云うよりも、貼り付けていたと云った方が正確かも知れないが。それは勿論電車に乗っているのだから、切符に類する何かは持っていて然るべきなのだが、Suicaのペンギンが普通に切符を持っているのが何故だか妙に可笑しくて、僕は想わず一人で声を出して笑ってしまった。僕の方が、余程周囲から奇異の眼で見られることとなった。
僕は予定通り池袋で電車を降りたが、そのペンギンは動じることなく席に着いたままだった。ペンギンの直ぐ横の扉からホームに出る時、ペンギンの持っていた切符を盗み見ると、540円と印字してあった。さて、一体何処まで行くつもりなのだろうか。