chronic life

I can (not) have relations.

吾輩は猫である/夏目漱石/新潮文庫

「(前略)今の世に合う様に上等な両親が手際よく生んでくれれば、それが幸福なのさ。然し出来損こなったら世の中に合わないで我慢するか、又は世の中で合わせるまで辛抱するより外に道はなかろう」(p.342)

多分、初漱石……かな。確か、高校の教科書に『こころ』の抜粋が載っていて、それが面白かったので『こころ』だけは文庫で買って持っていたと想うんですが、そのまま十年近く積みっ放しになっていて、今はもうどこにあるのか判りません。けど、まだどこかにはある筈なので、その内きっと探します(いやいや、これは本当にマジで)。そもそも、本書を読もうと想ったきっかけは、今年5月から7月にかけて、TBSの昼帯で放送されていた宮藤官九郎脚本の傑作ドラマ『吾輩は主婦である』を観たからでして、それにしては結構間が空いてしまったんですが、何とか2006年中に読めて良かったです。と、ちょっと前置きが長くなってしまったんですが、中身は普通に面白かったですよ。と云うか、正直こんなにもバラエティに富んだ内容だとは想ってもみなかったので、章毎に色んな人が出てきてはあーだこーだと文句やら自慢やら冗談やら蘊蓄やらを滔々と云い合っているのを読むだけで、充分に楽しめました。ストーリーがどうこうと云うよりは、語り手である猫(吾輩)の飼われている苦沙弥先生の家に集まる面々と、彼らの語り合う軽妙洒脱な会話、そしてそれらを見聞きし巧みに皮肉る吾輩の視点そのものの面白さが、本作の肝のように感じられました。と、何だか如何にも纏めっぽく書きましたが、そんな簡単にワンフレーズで良さを纏められるような作品では到底ないな、と云う気持ちの方が大きいですが。とは云え、ダラダラと書いているとどこまでも続けてしまいそうなので、この辺りで区切りを付けたいと想います。果たして我は、迷亭か独仙か。或いは、胃弱で神経衰弱の苦沙弥君か……。

吾輩は猫である (新潮文庫)

吾輩は猫である (新潮文庫)