本当は、受賞作が決まる前に候補となった五作を凡て読みたいと想っていたのですが、図書館でなかなか順番が回ってこなかったもので、結果的に本作だけ受賞後に読む形となってしまいました。僕の知る限りでは、あまり評判が良くなかったので、如何なものかと半信半疑な想いで読み始めたのですが、そんなことは全く関係なく、とても面白く読むことが出来ました。個人的には、候補作五作の中で一番好きだ!と云うほどではないですが、別にこの作品が芥川賞を取ったとしても、普通に納得出来るなぁ、と。特に、前回が絲山さんの「沖で待つ」だったのを考えると、流れと云うか、繋がりが見えてくるような感じさえしました。
と、ここまで殆ど小説の中身について書いてないような気がするので付け加えると、僕はこの小説って、人と人とが少しずつズレていって、最終的には別れていく、と云うその過程を、非常に丁寧に描いていて、とても好感が持てるなぁ、と想った訳です。その後で、また新たな出逢いなんかもあったりはするんだろうけれど、それもやっぱり結局最後は別れてしまう訳で。これは、恋愛とか結婚とかだけに限った話ではなくて、家族だって友人だって職場の同僚だって、もしかしたら夢だってそうかも知れない。そんな風に繰り返されていくものが、自動販売機の缶の入れ替わりとリンクしているような気がして、妙に感慨深かったのです。後、文章とかは、先日の『群像』5月号の「新人15人短篇競作」で読んだ中山智幸とちょっと似てるかな、と想いました。まぁ、話自体の状況とかも似てるっちゃあ似てるんですけどね。あー、何か判んないけど、結構長くなっちゃいましたね。いやぁ、書きたいことが色々多くて……。
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