chronic life

地下室の屋根裏部屋で

蛇イチゴ

先日、最新作『ゆれる』で甚く感動させられた西川美和監督の監督デビュー作で、以前から観ようとは想っていたのですが、丁度いい機会だったので今回観ました。公開当時は、宮迫さんが主演で、その妹役につみきみほ、と云うことくらいしか知らなかったんですが、これは平泉成さんと大谷直子さんが演じたその兄妹の両親も合わせた、家族四人の映画ですね。前半には、更に祖父役で笑福亭松之助師匠も出演していて、これがかなり鮮烈なんですが、個人的にはその祖父の葬式以降が好きなもので。とにかく、宮迫さんが演じた周治が非常に魅力的。飄々としていて、舌先三寸な感じがとても良かったです。こういう役をやらせたら、宮迫さんは実に巧い。それに、平泉さんと大谷さんも本当に凄くて、観ていて何度も鳥肌が立ちました。特に、それぞれシャンプーと風呂掃除のシーンが印象的でした。後、妹・倫子の恋人役で手塚とおるさんも出ていたんですが、いいトコのボンボンで小学校の教師役と云う設定にかなりびっくりして、手塚さんにこういう役を振るのって何だか凄いな、と想いました。全体としては、空気と云うか時間が澱んでいる感じや、一見普通の家族に見えていたけれど、ほんのちょっとした歪みやズレで凡てが崩壊していってしまう流れとかが実に的確に表現されていて、脚本や演出の巧みさにも舌を巻きました。映画自体の内容や雰囲気は全然違うんですが、「監督デビュー作にしてこの完成度!」と云う驚きは、内田けんじ監督の『運命じゃない人』とも共通するような素晴らしさでした。

蛇イチゴ [DVD]

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