これほどまで軽やかに、イタさと可笑しさが共存している小説を、僕は他に知りません。その立て役者は、偏に「お金」だと想われます。もっと大袈裟に云えば「経済」。そういう訳で、この小説を「経済小説」と呼ぶことに吝かでないですが、そうすると翻って「僕の生活も案外、経済的な毎日なのかも知れない」と云うことに、想い至ります。当然と云えば当然のような気もしますが。今の僕にとっては、青春的ルサンチマンよりも、こちらの方がよほど切なく、胸を打たれました。生き迷ってますねぇ。別に、道なんかどこにもないのに。
- 作者: 角田光代,藤野千夜
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/10/14
- メディア: 文庫
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