chronic life

地下室の屋根裏部屋で

はてなダイアラージャンプ漫画百選「外道」

このリレーが回ってきた時、最初に想い浮かべたのは、僕が「ジャンプ漫画」の中で最も愛している、冨樫義博の大傑作『レベルE』だった。しかし、この作品については僕よりももっと熱く、もっと深く語りたい人がきっといるだろう、と尻込みし、僕にはちと荷が重過ぎるのではないだろうかと、結局諦めることにした。そして次に考えたのが、かずはじめ作品だった。しかも、『MIND ASSASSIN』でも『明稜帝梧桐勢十郎』でもなく、97年3・4号に読み切りで掲載され、後にかずはじめ短編集『UNIFY』に収録された「外道」である。

あらすじ
舞台は異国の街。人々を恐怖のどん底に陥れた極悪人、高額賞金首の梧桐勢十郎が、彼の2人の仲間、勢十郎をあらゆる面でサポートする美しい女性の影人イオリ、悪を許さない賞金稼ぎ……だったはずのクリフォード・ローヤー(勢十郎の下僕になっている)と共に、平和な街に巣食う隠れた悪を退治する!

僕が最初にこの作品をジャンプ本誌で目にした際、いきなり扉絵にノックアウトされた。主人公・梧桐勢十郎のアップに、その顔を隠すのも厭わず筆文字で大きく「外道」と書かれている。今回、この百選の文章を書くに当たって改めて再読した時にも、この扉絵のインパクトは絶大だった。この一頁で、僕はすっかりこの作品の虜になってしまったのだ。
僕なりに考えるこの作品のテーマは、恐らく「善と悪」と云うことではないだろうか。上記粗筋の通り、主人公の梧桐勢十郎は極悪人であり、実際に作中でもタイトル通り「外道」らしい振る舞いをしている。しかし実はそれは見せ掛けで、本当はいい奴(善人)なんだ、なんてことが云いたい訳ではない。確かに梧桐と云う男は、人の道に外れた外道だ。しかし、しかし彼はクライマックスシーンで、「平和な街に巣食う隠れた悪」*1と対峙して交わす会話の中で、このような台詞を吐いている。

人を殺すのは罪で 心を殺す事は罪ではないのか

と。つまりはそういうこと、としか僕には云えない。正直、巧く言葉が紡げない。一言で簡単に「偽悪のアンチヒーロー」とでも云ってしまえれば、どれだけ楽なことか。「善と悪」なんて、そんな簡単に割り切れやしない。どうもかずはじめは(特に初期作品において)、ずっとそんなことをメインテーマに書いていたんじゃないだろうか、と云う想いが非常に強い。それが最も端的に表れているのが、この「外道」と云う作品なのではないだろうか。本当に道から外れた外道は、一体誰なのか……。
後に、メインキャラの設定を受け継いだ『明稜帝梧桐勢十郎』が単行本10巻分に渡って連載されたが、こちらは良くも悪くもジャンプ漫画の王道に乗っ取って、徐々にギャグとバトルの割合が高くなってしまい、「外道」にあったシリアスさが薄まってしまったように感じられた。勿論、それはそれで面白くはあるのだが。連載って、難しいなぁ。
オチもないし纏まってもないのですが、こんなところです。あー、何か超グダグダですいません。折角回していただいたのに……。

次にリレーを回す人なんですが、魔王14歳さん@id:Erlkonig如何でしょうか? 是非、宜しくお願い致します。

Unify―かずはじめ短編集 (ジャンプコミックス)

Unify―かずはじめ短編集 (ジャンプコミックス)

追記

本稿を書き終わった後に色々と調べてみて、今回取り上げた「外道」と、最初に取り上げようとしていた『レベルE』の最終回が掲載されたのが、同じ1997年3・4合併号(96年12月発売)であることが判った――と云うか、気付いた。何だろう、この運命と云う名の偶然は。何だか、謀ったかのようではないか。いや、衝撃を受けているのは、僕だけかも知れないが。凄い号だったんだなぁ、97年3・4号は……。

*1:上記「あらすじ」より