chronic life

stay awake, stay asleep

下弦の月

期待は必ず裏切る僕のこと、続けると書いておいて本当に続ける訳がない。と云う予想を更に裏切り、普通に続きを書くと云う――。オチはないけどね。


僕は自転車を停めて、その猫に近付いていった。
「しゅうしゅう」
猫は小さな声でそう鳴いていた。その瞬間に僕は、その猫の名前を勝手に「しゅう」と名付けていた。首輪はしていなかった。どうやら野良猫のようだ。相変わらず眼だけが異様に強く光っている。何だか吸い込まれてしまいそうだ。
僕はそっと手を差し出して、しゅうを自転車の籠に入れた。厭に大人しい。全く抵抗しない。それはそれでちょっと哀しい。まぁ、いいや。そのまま自転車を走らせて、僕は部屋に戻ることにした。僕は、猫を拾った。
部屋に連れて帰ると直ぐに、冷蔵庫から牛乳を取り出して、小さな皿に移してやった。しゅうは直ぐに皿に取り付いて、キチャキチャと音をたてながらミルクを舐め出した。お腹が減っていたようだ。部屋の明かりの下で見ると、どうやらとても濃い藍色の毛並みをしているようだった。「しゅう」と云う名の「藍」色の猫。何だかとっても象徴的だ。判る人しか判らないかも知れないけれど。