chronic life

I can (not) have relations.

デカルトの密室/瀬名秀明/新潮社

内容が理解出来ない以前に、情景がイメージ出来なかったと云うのが、僕にとっては結構致命的なことで、頭の中にその場面の画が浮かばないと、その先の台詞や思考なんかは、もうてんで読み込めない訳です。それでも自分が判ったと想える範囲では、とても僕好みの道具立てが揃っていたと感じました。チューリング・テストや中国語の部屋、それにデカルトなんかについては以前から興味があったし、脳の密室や宇宙の密室と云う設定(と云うか概念と呼ぶべきか)にも、とても心惹かれた。しかし、繰り返し出てくる「物語」と云うものに、僕はどうしても距離を感じてしまった。やはり僕は、「物語」よりも「小説」に強い関心があるのだと想う。そうなると、あのクライマックスはどうにも座りの悪い感じがしてしまうのだ。『指輪物語』も読んでないし。後はやっぱり、ロボットにもあんまり興味がないと云うことが、なかなかネックになってしまったのかも知れない。とは云え、非常に意義のある読書体験ではあったと想う。「読むんじゃなかった」とは、微塵も感じなかった。これを機に、ずっと観ずに遣り過ごしていた『2001年宇宙の旅』を、やっぱり観てみようと想ったし。何だか、酷くツボは外した感想のような気がして仕方ないが。

デカルトの密室

デカルトの密室