chronic life

地下室の屋根裏部屋で

百器徒然袋―風/京極夏彦/講談社ノベルス

読了。何だかんだで読み終わるのに一週間近く掛かってしまった。いかんいかん。えぇーと、榎木津が主役の、自称探偵小説シリーズの第二弾。まぁ、主役は本島君と云う見方もありますが。
ま、兎に角痛快です。既に、榎木津には『姑獲鳥の夏』の頃の面影はありません。明らかに別人です。「キャラが立って来た」と云う言葉を用いるなら、こんなに適役な人材もなかなかいないでしょう。滅茶苦茶にも程がありますが、是がどうして他人事だと想うと非常に面白い。下僕の方に感情移入してしまうと、こんなに苦しかったり迷惑だったりすることは無いのでしょうが、彼等だって半ば自ら好き好んでアレの近くをウロチョロしているのですから、ある意味自業自得……なのかなぁ。僕は京極堂程、冷徹にはなれないけど。
個人的に一番好みだったのは「五徳猫」。僕の好きな入れ替わりネタがあって、しかもそれが変な風に捩れているのが是又好み。そういう意味では、終盤の契約金殺人容疑を押し付け合う*1シーンが非常に秀逸です。榎木津の滅茶苦茶加減が、実に小気味良い演出を醸し出すのです。まぁ、本人にその積もりがあるのかどうか知りませんが。
後このシリーズは、(榎木津の影響で)本島君がどんどん凡人から逸脱していってしまう様も見処な訳ですが、僕は結構近藤が好きでして。で、その近藤の露出が一番多かったのが「五徳猫」だったので、それもあります。
取り敢えず、堪能。師匠のノベルスを二冊連続とかで読むと、頭も腕も一寸マッサージが必要になりそうです。

*1:正確には片方が押したり引いたりしてたんだけど