chronic life

I can (not) have relations.

GOTH 僕の章/乙一/角川文庫

分冊の下巻、と云うか二冊目です。僕も正直「この薄さなら、別に分冊しなくてもいいじゃないの」と想っていたんですが、両方読み終えてみると、案外分けてあって良かったような気もしてきました。勿論、二冊通しての連作短篇だし、世界観や登場人物も共通してはいるんですが、何だか微妙に「夜の章」と「僕の章」は別物のような気がしてしまいまして。それは、そのままずばりタイトルにも表れているように、主眼が「夜」と「僕」のどちらに置かれているのか、と云うことばかりではなく、作品全体の雰囲気や構成と云った面でも、読んでいてどうにも「別物感」があったと云うだけのことなんですが。まぁ、それはあまり重要なことではないのかも知れませんが、少なくとも僕にとっては、分冊されたことに意味はあったな、と。俗に、「黒乙一」「白乙一」なんて言葉を聞いたりしますが、この作品はタイトル、装幀、扉、そして何より内容から云って、恐らく「黒乙一」の部類に属するものと想われます。しかし、だとすると「別にそんなに黒くないじゃん。寧ろ、これって絵に描いたようなグレーじゃないか」と感じてしまった僕は、相当心が病んでいるのかも知れません。「現代の若者の歪んだ病理」と云う奴です(笑)。と云うか、全体的に狂いっぷりが甘いなぁ、と想っただけなんですけどね。あ、比較対象が飛鳥部とかだからなのかも。そりゃあ負けるに決まってる。
云い訳がましく長々と書いてきて、結局何が云いたかったのかと云うと、僕は二冊通じて「声」が一番好きです、と云うことなんですが。まぁ、あまりこういう尺度を振りかざすのは好きじゃないんですが、単純に一番巧く騙されてしまったもので。それだけ、読んでいてワクワク出来たと云うことでもありますし。

GOTH 僕の章 (角川文庫)

GOTH 僕の章 (角川文庫)