読了。初ミステリーランドな訳ですが、いきなり最初が是で良かったのでしょうか？ 全然ミステリーランドっぽくないです。後書きでご本人も「（前略）いつものように書きました。文章も特に子供向けにはしていません。」と、総ルビで書いてありますよ、あーた。普通の書き下ろし中篇（長さ的に長篇ではないでしょう）として、全く問題ないですね。
で、内容の方ですが、是が又何時もの竹本節がビシビシ効いてます。惑わすような夢幻と底の知れない恐怖、それに魅力的なキャラクターと不可思議な謎――そこで語られるのは、衒学的なトンデモトリック。超常現象スレスレを躱して着地するのは、余りにも居心地の悪い驚愕の真相。バカミスに振り切れてしまいそうな処を、何故か紙一重で切り返し、そこに残ったのは、特異な空間が齎した異常な歪みだけだった。是を貴方は、子供達に突き付けるんですか――？ いや、いい意味で。
とは云え、大変面白く読んだことは事実で、やっぱり僕は竹本さんが好きなんだなぁ、と。世界観や雰囲気も好きなら、文体やモチーフ、それに僅かな言葉の機微迄、細かい処程僕は気に入っている。偏愛していると云ってもいい。そんな僕だから敢えて云おう。非常に良かったです。
