chronic life

I can (not) have relations.

梟の巨なる黄昏

と云う訳で、上記の通り今日漸く読了しました。懸案であった、笠井潔氏の作品。僕が想っていたよりも更にずっと、『天啓』連作に通じる「大文字の作者」の問題に踏み込んでいるなぁ、と云うのが読中の印象。
異端の戦後作家、神代豊比古が遺した(とされる)幻の大作『梟の巨なる黄昏』と云う設定は、丸々そのまま『天啓の宴』に引き継がれているし、作者の喪失、大文字の作者と云ったモチーフも、同じように繰り返されている。唯、今作はそれに真正面から向き合って、批評的な手付きで自作に反映させようと云うよりも、それを一種のホラーに昇華させている処に、本作のオリジナリティがある訳で……。いや、こんな評論家みたいなことは僕には書けません。すいませんでした。
勿論、何時もの通り笠井氏の文章は読んでいて清々しい。純粋本格ミステリーでない本作でも、その筆致の冴えは抜群である。是は一つ、喰わず嫌いをしていた伝記SF『ヴァンパイヤー戦争』シリーズにも手を延ばしてみようか――と妄想が拡がる。と云うかその前に、僕はメインの矢吹駆シリーズをちゃんと読まないと(笑)。と云うか次は、どれに手をつければ良いのやら……困惑中なのでした。