chronic life

I can (not) have relations.

私が語りはじめた彼は/三浦しをん/新潮社

「責任を負うことはしないけれど、義務は己れに課します。エゴイストですがロマンティストでもあります」(「結晶」p.36)

 胸が痛い。生きているかぎり胸は痛む。幸せなときも、つらくてたまらないときも。(「残骸」p.80)

図太くも地道なその行為が、だれかとともに生きるということなのだ。(「残骸」p.87-88)

とても怖かった。変わってしまうことではなく、変化に対応する意志をなくしてしまう日が来ることが。(「残骸」p.89)

 激しい感情は書物と同じだ。どれだけ厚くても、いつか終わりがやってくる。僕はもう、激しさをすべて使いきってしまったから、あとはただ、はじまりも終わりもなく続いていくだけなのだ。(「冷血」p.216)

愛ではなく、理解してくれ。暗闇のなかできみに囁く私の言葉を、どうか慎重に拾ってくれ。(「家路」p.250)

夏の終わりの引用祭りです。「残骸」からのものが多く、逆に「予言」と「水葬」からは引いていませんが、一番好きなのは「冷血」だったりします。次が「水葬」、そして三番目が「残骸」って感じですかね。まぁ、そういう順位付けは、何より無意味な気がしてなりませんが。じゃあ、どうしてやっているんだ?と問われると、返答に困ってしまいますが。読み終わってから考えてみるに、本作は僕がこれまでに読んだどんな女性作家の作品よりも寧ろ、津原泰水の小説に最も近いような気がしました。果たして、それが突拍子もない意見なのか、これまでにも散々出尽くしているような読みなのか、別に殊更調べようとさえ想わないのですが、とにかく僕はそう感じました。そして、僕にとってそれは、最上級の褒め言葉であると云うことに、二瞬後くらいに漸く気が付いたのです。つまり、好きってことさ((C)渚カヲル)。

私が語りはじめた彼は

私が語りはじめた彼は