chronic life

地下室の屋根裏部屋で

沖で待つ/絲山秋子/文藝春秋

絲山秋子七冊目の単行本にして、第134回芥川賞を受賞した「沖で待つ」と、「勤労感謝の日」と云う二篇を収録した、小説集である。掲載は「勤労感謝の日」「沖で待つ」と云う順番で、共に初出は『文學界』。――とここまで書いて、この続きにいつものように、それぞれの感想、或いは一冊の本として自分の受けた印象などを記そうと想っていたのだが、今はどうもその時ではないような気がして仕方がないのだ。特に何か理由らしい理由がある訳ではない。だがしかし、そんな気がするのだから、そこを無理して書くことはないとも想う。面白くなかった訳でも、読んでいてどうしても納得のいかないところがあった訳でもない。寧ろ、とても面白かったし、共感(と呼んでいいのなら)する部分も多くあった。もしかしたら、僕の今の心境に一番近い表現は、「語る言葉を持たない」と云うことなのかも知れない。いや、そんなことはないと想うのだが。恐らく、小説を咀嚼し、消化する時間が必要なのだ。だから今は、こうして言葉を紡ぐのを止める。

沖で待つ

沖で待つ