chronic life

I can (not) have relations.

スモールトーク/絲山秋子/二玄社

読了。これは、クルマトイウモノについての本である――と断言してしまいたくなるほど、この本は全くもって車の話題に溢れている。絲山秋子、五冊目の著作で、現時点での最新刊でもある。どうやら、クルマ雑誌に連載されていたものを纏めた作品らしい。それぞれ違う車をモチーフにした六つの短篇が連作になっていて、その間に車に関するエッセイが挟まっていると云う、なかなか珍しい構成。珍しいと云えば、本を手に取って先ず目を惹くのが本自体の作りで、文字は横組みで左開き、各短篇の扉にはモチーフとなる車の紹介文が載っている(写真付き)。そんな訳で、小説の中にもバッチリそれらの車が登場するのだが、中身はいつもの絲山節、と云うかいつもより判り易い感じの恋愛話。車の話題と物語は殆ど五分と云った感じだが、少なくとも全く車に興味がない僕のような人間でも、充分楽しめる。とは云え、間に挟まったエッセイと巻末の対談を抜かすと、正味小説部分は100頁ほどで、しかもその内半分は車の説明やら何やらだから、実質物語は50頁くらいしかない感じで、少し物足りない気がしないでもない。後一つ云えるのは、僕はカマキリより田中肇の方が気になるなぁ。
短篇の間に挿入されているエッセイも含めて、絲山さんは本当に車が好きなんだなぁ、と実感出来る一冊。絲山好きなら、読んで損はないかと。あ、これで取り敢えず絲山さんの既刊は全部読んだなぁ。後は新刊を待つばかり、か。僕が好きな作家は寡作な人が多いので、その例に漏れることを期待しておこう。一先ず、10月発売予定の『ニート』を心待ちに……。

スモールトーク

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