chronic life

地下室の屋根裏部屋で

ケリー・リンク『マジック・フォー・ビギナーズ』早川書房

 時おり、大好きなテレビ番組のコマーシャルの最中に親友が電話してきて、ボーイフレンドのことを話したがったりする。電話を切ろうとすると、彼女は泣き出し、あなたはなんとか元気づけようとして、結局番組の後半を見逃してしまう。というわけで翌日仕事に行ったとき、何があったのか隣の同僚に教えてもらわないといけない。本のいいところはそこだ。どこまで読んだか、しるしをはさんでおけばいい。でもこれは本じゃない。テレビ番組だ。(p.311)

 無類のTVジャンキーとしましては、上に引用もした表題作を一番に推したいところではあるんですが、どの短篇も非常に面白くてなかなか甲乙付け難い。強いて挙げるとするならば、「いくつかのゾンビ不測事態対応策」「妖虗のハンドバッグ」「しばしの沈黙」辺りが好きですかね。『スペシャリストの帽子』も近い内に読みたいと想います。