まさか二十五歳にもなってこんな停電が怖いのか?(p.24)
ド直球投げてきたなぁ。小説を読んでいると云う感覚から遊離してしまいそうになるほど、胸の奥に真っ直ぐ届いてきた。これは……凄い。本谷有希子は小説家として、どんどん深化していっているような気がする。しかしまぁ、この小説にここまで感情移入出来るのは、もしかしたら少数派なのかも知れないけれど。いや、そんなことないか。だって、後半のバイト先から飛び出しちゃうところとか、もう本当にどうしようかと想ったもの。ここまで描かれたら、降参するしかありませんよ。ラストはちょっと甘いかなぁとも想ったけど、それで漸くこれが小説であると云うことを想い出せたので、これはこれである意味正解だったんじゃないかと。変な感覚ではあるけれど。それに、このポジティヴさをどう受け取るかと云うのも、大きな問題だと想ったりもするし。瞬間ですよ、五千分の一秒のね。後、僕の頭の中ではずっと、主人公の同棲相手である津奈木が、先日の『密室彼女』に出演していた加藤啓さんなイメージで読んでました。ぴったりだと想うんですよ、実際。
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/05/06
- メディア: 雑誌
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