喫茶店、電車、携帯電話、ミルク、古本屋、そして東京。
一青窈ファンとしては、ちょっと観るのを躊躇している部分があったのですが、先日深夜にTV放送されたものを録画していたのを漸く観ました。全くの杞憂でした、面白かったです。最も簡単に一言で表せば「淡々とした映画」なんだけれど、どうもそれではこの作品の面白さが凡て零れ落ちてしまうような気がして、なかなかそう云い切ってしまえない。一青窈の自然さと云うか、「ただそこにいる」感じが実によく表現されていて、もうそれだけでも充分に観た価値があった。それは、共演の浅野忠信が映画に出ている時の在り方にもちょっと似ていて、「ただそこにいる」だけで画になると云うのは、結構稀有と云うか、貴重な存在だと想う。しかも、雑踏や駅のホームなんかで大勢の中に紛れているシーンでは、暫くどこにいるのか見付けられないくらいなのが逆にいい。だって、普通そうじゃないですか。友達とか知り合いとか、よく顔を知っている人がそういう中にいたって、多分暫くは気が付かないと想うし、やっぱり「ただそこにいる」としか云いようがない。そして、だがそれがいい。ストーリー的に、クライマックスがあって感動的なラストが待っている、とか云う類の作品ではなく、一人のそう特別でもない女性の人生の、ある時点からある時点までを何気なく切り取って、それを映し出しているって書くと、ちょっと普通過ぎるかなぁ。個人的には、保坂・柴崎ラインの小説が好きな人にお薦め、と云うことで。
- 出版社/メーカー: 松竹ホームビデオ
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