浅野いにおがいれば、もう俺には何もすることがないじゃないか。と云うか、どうしてこれを書いたのが俺じゃないのかが判らない。いや、やっぱりいにおがいてくれて良かった。だってそうじゃなかったら、俺はこれを読むことが出来なかったのだから。
布団に寝転がって読みながら、胸中に込み上げてくる爆発しそうな様々な感情に突き動かされて、何度敷布団に拳を叩き付けたり、嗚咽を抑え込んだりしたことか。とても一つの言葉になんか集約出来ない。どうにも名指し難い、でも絶対に誰もが感じている筈の何か。そんな何かが端から端までてんこ盛りで、きっと誰しも何かしらの琴線に触れることだろう。これは、描かれるべくして描かれた、正に必然の書だったのだ。そして、少なからず共鳴する人間にとっては、必読の書と云ってもいいと想う。「絶対これを読ませたい!」と想った人間の顔が、読んでいる最中に最低四つは浮かんできていた。同時代性とか同世代と云う言葉で片付けてしまうのは、実はあんまり得意ではないのだけれど、しかしそんなことはお構いなく、「とにかく読め!」と叫びたい。もしつまらなくて全く惹かれるところがなかったら、僕が責任を取る。と云うか、その四人分くらい、俺が買って送りつけてやってもいいんだけど。残念。
小説でこれを先取り出来なかったのは本当に悔しく想うけれど、105頁の四コマの流れと云うか雰囲気なんかは、とても他のメディアでは真似出来ないんじゃないだろうかとも想う。203頁で猛然と頁を捲る手が止まってしまったのも、多分漫画だからこそだろうし。そう、ストーリーと云うか中身ばかりが殊更強調されそうではあるけれど、このタッチと云うか絵柄が、僕は非常に好きである。やはり、この絵があってこその浅野いにおだと想う。だって129頁の最後のコマとか、本当に狡いもん、マジで。
――と、書きたいことは尽きないが、今は一先ずこれくらいで。それにしても、感想を書いているだけで色々と想い出してしまって、鳥肌が立ったことなんてこれが初めてだ。未だに、心の震えが治まらない……。
- 作者: 浅野いにお
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/12/05
- メディア: コミック
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