chronic life

I can (not) have relations.

廃人への記憶

気が付くと僕は、夢の中にいた。直ぐにこれが夢だと気付いたのは、どうやら今読んでいる筒井康隆の『パプリカ』の影響のようだった。僕にしては珍しく、夢のことをちゃんと記憶していると云うのも、無意識で自分がそのような状況を求めていたからかも知れない。
夕方のようだ。眼の前には、僕が通っていた中学の校舎が見える。僕の直ぐ脇には、通学時に乗っていたスクールバスがスタンバっていた。正面玄関から学生がドッと流れ出て、次々とそのバスに乗り込んでいく。どうやら僕のことは誰にも見えていないようだった。
何時の間にか場面は変わっていて、ここは僕が就職して最初の年に働いていた、地方都市の駅ビルの中のようだ。僕は毎週末、この中に入っている大型書店に行くのだけが楽しみで、仕事をこなしていた。しかし、今では何故かその書店のカバーが掛かっている本は殆ど手元にない。押入れの段ボール箱の中にはあるけれど、と云う意味だが。
やっぱり僕はその書店にいて、棚から双葉文庫の『鬱』を抜き取っていた。新刊だった。これも何だか変な小説だった。如何にも、5年前の僕が好きそうな内容の。いや、今でも充分好きなのだが。これも何かの縁だろうか。久し振りに読み返してみようと想った。