chronic life

地下室の屋根裏部屋で

滅入ノレ

 あの日以来、穂積は一度も洗濯をしていない。安い新品の服や下着を長いこと着たきりにして、耐えきれなくなったらまた新しいものに着替えると云う生活を、もう四年以上も続けていた。「あの日」とは勿論、3.11のことだ。
 どうしてそんなことになってしまったのか、穂積にも理由はよく判っていない。ただ「洗濯するのが馬鹿らしくなった」と云う気持ちはある。人に会うことも、外出することさえ稀な毎日を送っているから、何とかなっているようなものだった。不潔で不経済だと頭では理解しているが、クリーニングに出すよりは安上がりだったし、第一洗濯機を修理するのも億劫なのだ。どうせ、そう長くは続かないだろうと思いながら、また一日が過ぎてゆく――。

『ヤメゴク〜ヤクザやめて頂きます〜』第壱話。

いやー、ここで終わるのか! (少なくとも序盤は)もっと一話完結的な構成なのかと思っていたので、この続き方にはちょっと驚いたなぁ。始まって暫くは『SPEC〜翔〜』っぽいな、と思っていたんですが、その印象は段々と薄れていきました。要は、ミステリーでもSFでもなく最早、刑事ものでさえない。これは人間ドラマなんだ、と気づいた訳です。そう考えると、クライマックスの展開もそれほど突飛なものではないんだな、と思うに至りました。
山口紗弥加さん、『ようこそ、わが家へ』に続いて、こちらでも実に素晴らしい。エンケンさん、『不便な便利屋』のバツさん(梅本)と同じ人とは思えません笑 勝地君、これからは「前髪クネ男」ではなく「佐野直道」と呼ばれることでしょう!
嗚呼、次回が待ち遠しい!!

『アルジャーノンに花束を』第1話。

まず、脚本監修ではありますが、野島さんがTBSのドラマに関わるのって、2009年の『ラブシャッフル』以来なんだよなぁ。確かに、過去の野島作品を連想させるようなアイテムやモチーフ、それにキャスティングが目を惹きますね。その中でも「母親(ママ)に捨てられた(と思っている)子供」と云うのが、特に印象的だなぁ、と。この辺り、同じく脚本監修をした昨年の『明日、ママがいない』とはかなり直接的に繋がっている感じがしますね。まぁ、もっと昔からよく描いていたテーマだとも云えそうですが……。
今のところ、咲人の両親が回想でしか出てきていないのも気になる。壱成さん演じる久人がどうなっているのかもですが、草刈さん演じる窓花が今どこにいるのか、そして咲人の妹か弟らしき赤ちゃんが、もう既に登場している人物の中にいるんじゃないだろうか?疑惑は、色々と想像の翼を広げる余地がまだあるなぁ、とも(年齢的には、女子大生二人か風磨君くらいですよねぇ)。
で、谷村さんと大政さんの関係は、どことなく『美しい人』の内山さんと池脇さんのことを想起させるなぁ、なんて。それにしても、クラブの描写ってもうこれ以上、何とかならないものなんですかねぇ……。
後、栗山さん演じる遥香が咲人と話す場面で、ちょっと『ATARU』の蛯名舞子に近いものを感じたのは、恐らく織り込み済みなんだろうなぁ。韓哲プロデューサーだし。
初回としては、こんなところで。二回目観たら、もう少し加筆するかも知れません……。

「あいきょ(愛嬌)でしょ」は、実にらしいなぁ、と思いました。

Google+よりインポート

今更ですけど、何を書いたらいいのか困っちゃいますね。
今は、折原一の『七つの棺』を読んでいます。部下の竹内刑事役を女性キャストに変えたら、すぐにでも《金曜ナイトドラマ》辺りでやれそうだなぁ、などと思いつつ……。その時は是非、ご(ry

殆ど今、彼は頬にある血溜まりを紙ナプキンで拭った

 酔っ払った父が、階段を踏み外して二階から転げ落ちてきた。後頭部からは、錆色の液体が土間へと広がっている。彼は、その一部始終を見ていた。仁王立ちで、微動だにせず、二十分ほども見ていた。死んだのではないだろうか、と思った。息をしているようには見えなかった。指先一つ動いてはいなかった。もしかしたら、正に死につつある、その過程を傍観しているのかも知れなかった。轢き逃げ犯のようにどこかへ走り去ることも、善良な市民のように救急車を呼ぶこともなかった。ただ、部屋にいた。居間から眺めていた。棒立ちで、時が過ぎるのを待っていた。
 どうやら、まだ生きているようだった。呼吸音のような、小さな呻きのようなものが幽かに聞こえた。躰を捩らせるように、少しずつ手足も動き出していた。舌打ちをしたのは、彼の方だった。急に興味が失せていった。生きているのなら、見ていることはなかった。一時停止していたテレビデオのリモコンの「再生」ボタンを押して、彼は元のように腰を下ろした。田村正和が、犯人役の誰かと台詞の遣り取りをしていた。もうすぐ、解決篇が始まるだろう――。