1949年6月、ケンブリッジ大学で非公式に行われたあるディナーに参加したのはこの五人。C・P・スノウ、アラン・チューリング、J・B・S・ホールデイン、エルヴィン・シュレーディンガー、そしてルードヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン。彼らがその夜、食卓を囲んで議論したのは、「考える機械」についてだった。
これが、この「科学小説」*1の筋立ての凡てである。後は、彼らの非常に有意義でエキサイティングな議論を楽しむだけだ。実際にこの五人が集まったとしたら、本当にこのような議論が交わされていたのではないだろうか、と不意に想わせる筆致が素晴らしい。特に、チューリングとヴィトゲンシュタインのキャラの立ちっぷりたらないね。なんて軽く書いてますが、チューリングテストや中国語の部屋(によく似た設定)についてなど、議論自体は非常に真面目なので、キャラ読みとかしてる場合じゃないんですが。自分で勝手に手に取っておきながら、ちょっと読み難いかも、と敬遠していたのですが、読んでみたらとっても素直に面白かったです。果たして、機械も人間と同じように考えることが出来るのか、と云う命題に少しでも興味がある人は、読んでみて損はないかと。単純に、知的読み物としても楽しいですし。
- 作者: ジョン・L.キャスティ,John L. Casti,藤原正彦,藤原美子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1998/09
- メディア: 単行本
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*1:「前書き」より