chronic life

I can (not) have relations.

袋小路の男/絲山秋子/講談社

読了。図書館で、漸く順番が回ってきたので読みました。本日発表される第133回直木賞で『逃亡くそたわけ』が候補となっている絲山秋子の作品で、こちらも半年くらい前には結構話題になっていたと想います。表題作は、第30回川端康成文学賞を受賞。
三つの短篇が収められていて、その内「袋小路の男」と「小田切孝の言い分」は連作、と云うか繋がってます。なので、てっきり全部繋がってるんだと想って三作目の「アーリオ オーリオ」を読み始めたら、全然別のお話でした。情けないような、物哀しいような。
内容に関しては、巧いの一言に尽きると想います。かと云って、別に技巧に走っているとかそういう意味ではなくて、スッと読んでいる人の心に寄り添って、いつまでも傍にいるような小説だなぁ、とか想っただけでして。これが恋愛小説なのか何なのか、そんなことは僕にはよく判りませんが、この小説が面白いと云うことだけはよく判る。そりゃあ、話題にもなりますよ。
まだ著作もそれほどの数ではないようなので、片想いをするように、ゆっくり密やかに、絲山秋子と云う作家を追い掛けていきたいと想います。ただ、これで直木賞を取ってしまうと、また図書館の予約人数が跳ね上がってしまうのが少し心配なだけでして。自分勝手な読者だ(苦笑)。

袋小路の男

袋小路の男