chronic life

地下室の屋根裏部屋で

山崎ナオコーラ『手』文藝春秋

 しかし、ホテルに入るほどの気持ちには、到底なれそうになかった。恋ってなんなのだろう。(p.36)

 自分のレゾン・デートルのために他人が必要なのだろうか。いや、違う。人間は、交情し合いたいだけなのだ。(p.150-151)

 水が流れ落ちるように、人の気持ちも、関係も、納まる先で、形が作られる。
 毎晩、なかなか眠ることができない。
 しかし、生きているだけで、えらい。
 生きているだけで、
「自殺することに、反対です」
 というシュプレヒコールをあげていることになる。
(中略)
 生きているだけで、えらい。
 俺は、生き続けるだけで、えらい。(p.158-159)

 書き下ろしの「お父さん大好き」が一番好きかなぁ。引用したい箇所もまだまだ沢山あったんですが、あまり多いと申し訳ないかなぁ、と想いまして。文芸誌に掲載されている新作、単行本になるのを待たずに読んじゃおうかなぁ。「かなぁ」ばっかり。

手