chronic life

I can (not) have relations.

次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?/柴崎友香/河出文庫

「右や。次の角も右。その先はそのとき決める。さあ、行くで」(「次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?」p.89)

と、引用したのは表題作からなんですが、どちらかと云うと僕は、併録されている「エブリバディ・ラブズ・サンシャイン」の方が好きです。二作共非常に柴崎さんらしい作品で、両方とても好き小説なので、敢えて甲乙を付けるならばですが。この本について語る場合、やはり先ずあまりにも秀逸なこのタイトルについて言及せずにはいられません。「解説」で綿矢りさも書いていますが、読む前は歌手の話か、歌手とまでは云わなくても、作中で誰かの歌うシーンが沢山出てくるんじゃないだろうかと想っていたのですが、そんなことは全然なくて、表立って歌が出てくるのは、「君が笑ったらぼくも笑ったような気分だ、君が泣いたらぼくは最悪な気分だ」と云う歌詞が印象的な、東京へ向かう車内で聴くMDに録音されたアメリカのバンドの曲、一曲のみです。ドライブと云うには長過ぎるけれど、旅行と云うには些か物足りない、そんな若者四人による大阪か京都から東京までの道中を描いた、判り易くカテゴライズすれば、ロードムービー的な小説と云うことが出来ると想います。そんな中で特に気になったのは、本作の中心的人物である小林と、その後輩のコロ助*1の対話でした。「持つ者」と「持たざる者」とまではっきり分かれている訳ではないのですが、この二人の遣り取りは時にユーモラスで時にスリリングで、個人的にはそれを第三者的な立場から聞いている(しかも大抵は笑っている)恵太に最も共感しました。こういうぶつかり合い*2って、傍から見ている分にはとっても面白いじゃないですか。まぁ、僕は趣味が「モニタリング」ですから。でまぁ、色々とあった上で、この小説のラストの時点での小林の心境が最も端的に表れているのが、冒頭に引用した台詞ではないかな、と僕は考える訳です。で、この流れを推し進めていくと、小林は『ハチクロ』の森田みたいになっちゃうんじゃないかなぁ、と。勿論これは、あくまで僕の妄想ではありますが。
「エブリバディ〜」の方が好きだとか云いつつ、表題作についてこんなに書いてしまった。やはり、両方面白かったと云う証拠だろう。その「エブリバディ〜」には、僕にとって非常に興味深いことが台詞として登場していて、「それは果たして本当だろうか?」と、少しばかり訝っている自分がいる。それは、「25歳までは眠たいけれど、それを過ぎたらもう大丈夫(大意)」と云う主張(と云うか意見)で、今現在25歳である僕としては、来年の誕生日以降になってみないと、この言葉が真実であるのか否か、どうにも証明する術がない。少なくとも今は、「エブリバディ〜」の主人公の工藤さんほどではないけれど、かなり眠っている方だと想う。いや、眠ってしまう方だと想う。サンシャインよりムーンライト。いや、デイブレイク。

次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? (河出文庫)

次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? (河出文庫)

*1:当然、仇名だと想う。しかし、本名でないと云う保証はどこにもないような気がする。

*2:と云うほどのものではないけれど