chronic life

地下室の屋根裏部屋で

砂の本/ボルヘス/集英社文庫

「たしかに。もはや、われわれには引用しかないのです。言語とは、引用のシステムにほかなりません。」(p.107)

「死ぬためには、生きてるだけでいいんだわね」と女たちの一人が言いました。(p.233)

読み始めてから暫くして、「この感じ、誰かに似てるんだよなぁ」とは想ったものの、「砂の〜」の繋がりで安部公房と云うのも微かに脳裏を過ったけれどやっぱり違うしなぁと、そんなモヤモヤした気持ちのまま「砂の本」の方は読み終えてしまいました。しかし、「汚辱の世界史」に入って直ぐ、それが一体誰だったのか、まるで天啓のように頭の中に浮かんできたのです。この感じって、古川日出男(特に『ロックンロール七部作』とか)じゃん、と。そう気付いてから、再び「砂の本」を少し読み返したり、「汚辱の世界史」の方を読み進めたりしていったら、その想いはより強固なものとなり、最後まで読み通した今となっては、既に「ボルヘスは二十世紀の古川日出男である」と云う、どう考えても本末転倒気味なフレーズが脳内を占拠してしまって、全然出て行ってくれそうにもありません。仕方がないので、自分が『ロックンロール七部作』を読んだ時にどんな感想を書いたのか確認してみたら、こんな感じ*1なんですもん。本当、過去の自分に嫌気が差してしまいます。いや、まぁ、これはこれでいい感想だと想いますけど(自画自賛)、本書にはちょっと援用し難いよ(考え方が卑しい)。と云う訳で、普通に自分の心に残った奴を挙げていくと、「会議」「三十派」「疲れた男のユートピア」「ばら色の街角の男」「寛大な敵」と云った辺りでしょうか。とは云え、ボルヘスの他の作品を手に取るかどうか、些か迷ってもおりますが。取り敢えず、『不死の人』は読んでみようかな。

砂の本 (集英社文庫)

砂の本 (集英社文庫)

*1:id:thebomb:20060511:1147361715