辛かったなぁ、実に辛かった。つまらなかったと云う意味ではなく、こんなに読んでいて辛かった本と云うのも、僕の中では近年稀だったように想われる。或いは、それぞれの短篇のラストにおいて、希望と云う名の一筋の光がしっかりと提示されていたのかも知れない。しかし、僕はそれに気付くことが出来なかった。それまでの展開が、物語が、描かれている凡てが哀しくて切なくて、やっぱり辛くて、どうにもそこまで辿り着くことが困難だったのだ。あまりにも微かな光を、僕の視力(読解力)では捉えられなかった、と云う風に解釈することも充分に可能ではあるだろうが。そんな中でも特に印象的だったのが、「徴兵の日」と「こんなところで死にたくない」の二篇。いやーでも、やっぱり辛いもんは辛いですよ。それなのに、何なんだろう、この「凄く良かった」と云う読後感は。自分の気持ちが、自分でもよく判らない。心の奥底では、彼の書く小説を更に求めている。ある種のMってことなのかねぇ、こういうのも。
- 作者: ラッタウット・ラープチャルーンサップ,古屋美登里
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/02/21
- メディア: 単行本
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