chronic life

地下室の屋根裏部屋で

論理の蜘蛛の巣の中で/巽昌章/講談社

約七年半に渡って『メフィスト』誌上にて連載されていた、広義のミステリー(の新刊)を対象とした、同題の時評をほぼそのままの形で単行本化したもの。雑誌掲載時より、その折々で少しずつ触れてはいたのですが、こうして纏まったものを続けて読むと、これが非常に有意義で楽しいものでした。取り上げられている作品に関しては、正直未読のものの方が多いくらいかな、と云った感じだったのですが、それと合わせて*1論じられている作品は既読だったりして、なかなかに興味を惹かれる書き方だったと想います。本書を読まなければ、タイトルや作者名だけは知っていても、恐らく今後も読むことはなかったであろう作品についても、何作か「凄く読みたい!」と云う気持ちになったので、そういう意味では良かったような悪かったような(精神的積読が増える一方ですので)。来年、リニューアルして復活する予定の『メフィスト』においては(或いは別の媒体でもいいのですが)、更に対象書籍の幅を広げ、純文学やその他のジャンル小説の中でもミステリー的な要素や趣向が感じられる作品について、より深く言及していただけると嬉しいかな、と(巽氏によって既にそういう試みがなされているとすれば、私の無知を曝しただけですが)。そう云った境界線上にあるような作品が、結構好きだったりするもので。まぁ、一読者の小さな独り言ではありますが。

論理の蜘蛛の巣の中で

論理の蜘蛛の巣の中で

*1:並べて?