自分たちは、他者を憎み、恨み、妬み、嫉み、蔑み、貶め、拒絶し、愚弄し、嘲笑い、騙し、裏切り、傷つけてきた。心のなかで――ときには態度や言葉で、あるいは行動で。そしてそれらは、たいてい自分の脳内で都合よく変換され、捏造も加えられ、自己にとって肯定的なものへと変化してゆく。自分の心理的立場を被害者のそれへと変えてゆくことすらある。(p.305)
小川勝己、一年三箇月振りの新作。きっとこれは、小川勝己にしか書けない話だったような気はするけれど、僕のかつみんに対するハードルはもっと高いのです。細かい部分で面白いところはあったし、全体としても悪くないとは想ったんですが、どうも章立てや時制に関して、引っ掛りを覚えることが間々あった。まぁ、それもかつみんの持ち味の一つではあるんだけれど、本作ではそれがあまり活きていないように感じられた。とは云え、登場人物のキャラクターと云うか性格設定とかは結構好きだし、このちょっと「間に分け入って一言もの申したい感じ」の会話とか展開とかも良かったと想う。まぁ、結局僕のかつみんに対する期待が大き過ぎる、と云うことになってしまうのかも知れませんが。もっと凄いのが書ける筈!と云う、最早期待と云うよりは願望に近い想いがずっとあるのですよ、かつみんに対しては。って云うか、どうして『眩暈を愛して夢を見よ』は一向に文庫落ちしないんだよ。ずっと待ってるのに!
- 作者: 小川勝己
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/10/21
- メディア: 単行本
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