chronic life

I can (not) have relations.

ブラバン/津原泰水/バジリコ

「僕には両方を弾く権利があります。人間あした死ぬかもわからんのに、未来があるかどうかわからんのに、二つの楽器を練習することも許されんのですか」(p.209-210)

「同じことじゃ思うで。俺はたぶん、何かが終わっていく感じが嫌いなんよ。どうように下らんことでも、それが終わるんが悲しいんじゃ。ほいでも終わらんものなんかどこにもない。じゃけえせめて最後の最後まで見届けようとする」(p.307)

本当は、他にも引用したい箇所が幾つもあったんですが、厳選に厳選を重ねて、何とか二つに絞りました。しかもそれが両方共、語り手の(過去の)台詞と云うのが、何とも僕らしいような気もしてしまいますが。本書には、本篇の前に掲載されているものと同じ内容の「登場人物紹介」の小冊子が付いていて、そこには生徒と顧問併せて、三十四人もの名前とそれぞれについての短い紹介文が書かれているんですが、その中の誰にも全く共感出来ないと云う人が、果たしているでしょうか。たとえ音楽に携ったことはなくても――いや、高校に通ったことさえなくたって、この三十四人の中の誰かに、少しでも自分の姿を重ねない人はいないんじゃないだろうかと、僕は想う訳です。つまり何が云いたいかと云うと、この小説を読んで心を震わせることがない人なんて、誰一人としていないような気がすると云うことです。だから、この本はもっと売れて、もっともっと多くの人に読まれるべきだと想います。津原泰水なんて全然知らない人にも、「ブラバン」が何の略かさえ判らないような人にも、きっとこの作品は届く筈です。と云う訳で、どう考えても後追いのコメントになってしまうのが少しだけ恥ずかしいような気もするのですが、こういう小説に是非、本屋大賞を受賞していただきたいと切に願うのでした。最後になってしまいましたが、最高に素晴らしかったです。

ブラバン

ブラバン

ベースを買うシーンとか一番ラストとかも当然、涙腺緩みっ放しだった訳ですが、個人的に最も感情が昂ったのは、p.381ですね。その辺りはもう、完全に語り手とシンクロしてましたから。何かこう、ぶわぁってなって大変でした。いや、今もまだその余波が残っているような感覚ではありますが。