あー、ズルいなぁ、ズルい。小説としてどうかと云う前に、この設定とかテーマがヤバい。僕の元々の性向としては、こういう作品に一番弱いんですよ、本当。作風とか内容は全然違うんですが、去年桜庭一樹の『少女には向かない職業』を読んだ後のような、何とも逃げ切れない感じだけが残りました。リアリティがどうこうと云うよりも、僕にはこれが限りなく現実的なものに感じられたのです。はぁー、参った……。
追記。もしかしたら、これまで読んだ今回の芥川賞候補四作の内、この作品が一番読者を選ぶかも知れない。要は、実感と云う点において。