村上春樹作品に対しては、タイトルなどから勝手なイメージを抱いていることが多くて、しかも殆どの場合、そのイメージは実際の作品とは全然違っていたりする訳です。この作品も正にそうで、僕が読む前に『国境の南、太陽の西』と云うタイトルから想像していたものとは、全く異なる内容なのでした。その上、読み終わった今となっては、自分が事前に一体どんな想像をしていたのか、さっぱり想い出せないほどです。現実との距離感と云う意味では、僕にはこれくらいの感じが丁度いいようで、どうも僕は小説を読む時に、地名や実在の人物の名前などの固有名詞が登場している作品に、どうしようもなく安心感を覚えてしまうみたいです。そういうのが全くないと、何だか妙に不安で。居心地が悪いと云うか。
このラストをどのように受け取ればいいのか、ずっと悩んでいると云うか、考えている。それはつまり、幸福について考えていると云うことと、殆ど同じなのかも知れないけれど。しかし、僕は幸せだと想うなぁ、「僕」は。それを「僕」が、幸せと感じられるのならば。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1995/10/04
- メディア: 文庫
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