chronic life

I can (not) have relations.

城/カフカ/新潮文庫

この作品については、後日別の形で色々と意見を表明するつもりなので、この場ではいつもにも増して、直接内容には触れないようにしたいと想います。まぁ、そんなこと全く意に介さないような小説ではあるんですが……。
昨年の『群像』9月号で、佐藤友哉が「スーパー小説」なる言葉を繰り出した時、真っ先に僕の頭に想い浮かんだのが、このカフカの『城』だった。1999年、野島伸司脚本の連続ドラマ『リップスティック』の作中において、窪塚洋介演じる牧村紘毅がカフカの名前を挙げたのをきっかけに、『変身』とこの作品の二作を読んで以来の再読で、その頃よりは多少なりとも読み手として成長しているのではないだろうかと想っていたのだけれど、当時の感想やら読後感やらをさっぱり忘れ去ってしまっていたので、殆ど初読と云ってもいい感覚だった。僕が知っている限りで、この小説に最も似ているのは、滝本竜彦の「ECCO*1ではないだろうかと想う。設定や道具立てとして、それほど似たものがあるようには想えないけれど、登場人物達の交わす言葉――と云うか台詞の遣り取りが、圧倒的に滝本っぽいと感じたのだ。この作品の中で交わされる、会話や対話とはとても云い難い、強いて挙げるなら「言葉のエアホッケー」とでも云うしかないような応酬が、実に「ECCO」と相通ずるような気がしたのだ。ただ、まともに「ECCO」を読んだのも結構前だから、多少勘違いはあるかも知れないけれど。出来ればこの辺りを突破口に、何か考えが纏まるといいんだけどなぁ。
最後に、読み始めてからずっと、僕はある一つの疑問を抱いていて、主にそれを念頭に置いてラストまで読み通したのだけれど、結局その疑いを完全に晴らしてくれるような記述は、作中のどこにもなかったと想う。寧ろ、僕の考えを補強してくれような書き振りは、幾つか読み取れたのだが。どちらにしても、何だか妙に気恥ずかしい感じがするので、その疑問に関しては大幅に伏字にさせていただきます。果たして、×は××に××××××のだろうか?と云うことです。さて、他の人の意見が楽しみだ。

城 (新潮文庫)

城 (新潮文庫)

*1:このまま幻の作品にならなければいいけど