chronic life

I can (not) have relations.

レキシントンの幽霊/村上春樹/文春文庫

良かった。この「良かった」は、心の底から深い実感を込めて吐き出された、僕としてはかなり重みのある「良かった」なのです。文庫本で200頁ほどと云う長さにして、とても読み応えのある、非常に充実した内容の短篇集だったと想います。全体的にどれも面白かったのですが、特に「沈黙」が頭一つ飛び抜けて素晴らしかった。これはちょっと特別。何と云うか、心の奥深くの最も繊細な部分をフッと掴まれてしまったようで、読み終わった後暫く何も手に付かなかった。それくらい凄かった。もしこれを十代*1の頃にでも読んでいたなら、そのまま一気に春樹街道まっしぐらだったかも知れない。初めて読んだのが今で、良かったのか悪かったのか……。今でも充分、衝撃的でしたが。それ以外だと、「トニー滝谷」と「めくらやなぎと、眠る女」も良かったです。「トニー滝谷」については、市川準監督の映画版も観てみようと想いました。こういう話で、演者がイッセー尾形さんと宮沢りえさんだなんて、かなりいい感じに仕上がってそうだなぁ。とにかく、いい短篇集でした。

レキシントンの幽霊 (文春文庫)

レキシントンの幽霊 (文春文庫)

*1:と云うか、学生時代