chronic life

I can (not) have relations.

サイレン

ホラーではない、サウンド・サイコ・スリラーだ。と云う一文が、凡てを表しているような気がする。今年公開作が数多く控えている、堤幸彦監督の2006年公開第一作で、主演はその堤監督と『H2』繋がりの市川由衣。なかなかの体当たり演技で、好演していたと想う。その他のキャストでは、松尾スズキの異様な存在感と、森本レオの恐ろしさが際立っていた。西田尚美嶋田久作も良かった。後、田中直樹のキャスティングは巧かったと想う。
堤作品お馴染みの笑える小ネタは殆どなく、全篇シリアスだった。強いて云えば、『ケイゾク/映画』のラスト30分がずっと続いているような(とは云え、本篇は87分なのだが)。その代わり、細かいディテールでの遊びや拘りは随所に見られる。例えばそれは、ある種の奇妙な像であったり、不思議な島の情景だったりする。そして圧巻なのは、クライマックスの鉄塔と海。しかもそれが、実際に存在する鉄塔でのロケ撮影と知って、二倍驚いている。しかし、やはり最も印象に残っているのは音である。タイトルの示すサイレンの音は勿論、それ以外の多くのSEや人の声、BGMがずっと脳内に残響している。「音を観る」と云うことがあるのなら、こういうことなのかも知れない。
公開されてまだ間もないので、あまりネタを割るようなことは書きたくないのだが、これ以上は良かったところを書くにも悪かったところを書くにも、核心に触れずに済ませると云うのは殆ど不可能のような気がして、どうにも書きあぐねてしまう。邪心にも仄めかしてしまうと、犬の名前に注意。まぁ、そんなことは関係なく、少しでも勘が働けば、恐らくネタには気付いてしまうとは想う。が、しかし――。観終わっても、色々と納得のいかない、釈然としない気持ちは残っている。あそこのアレは一体何だったんだ? あのシーンって、結局どういうことだったんだ?と。まぁ、あまり深く考えても詮無いことかも知れないが。そんな訳で、映画館の大音響の中、なるべく事前情報を入れずに観ることをお勧めします。って、もうこの感想をここまで読んじゃってたら意味ないけど。
http://www.siren-movie.com/